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平和の鐘、一振り運動

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ヒットラーの「反ユダヤ主義」から、広島、長崎までの経緯を追う まえがき

まえがき

広島、長崎への原爆投下から、今年で75年になる。

世界中がコロナ感染の恐怖に陥り、日常の生活が規制され窮屈な雰囲気の中にある。他のアジアの国では、感染をくい止めるためだという理由で、罰則付きの外出禁止令が施行されている。日本は、憲法上国民の行動を罰則付きで規制することができない。国民一人一人の自己規制によってこの1か月半ほどの「ステイ・ホーム」を実施してきた。その結果、爆発的な感染は避けられている。これからの状況はまだどうなるかは定かではないが、ヨーロッパやアメリカの感染の実情からみると、国民の意識やモラルが、戦後の新憲法下での教育によって、かなりの高水準に達しているから、罰則がない状況でも緊急時の約束を破る人が少ないと言えるのではないかと思う。国内外の大量の人命の犠牲を代償に勝ち取った民主的で平和的な教育は、「国自体が武力を持たず、人間の知性と勇気に期待して、他国、他人を思いやる人間の心」を育ててきた。先日、某大臣がこのことを、民意度が違うという他国を差別するような発言をしていたが、私は、戦前の軍国主義的教育から、激的に民主的な教育に変化できたのは、国内外の多くの犠牲がもたらしてくれた貴重な贈り物だと思う。

今、緊急事態だから、国の命令に服従させるべく、新しい憲法を作らねばならないと、まるで戦前のような主張をする人達も出てきている。
戦前、勝つ見込みもない戦争に、国民を拘束し命令に服従させ、多くの若者を死に追いやった事実を今こそ思い出し、「火事場の泥棒」よろしくコロナ騒ぎの中で、大切な憲法や法律を改悪させてはいけない。この拘束された日常を、戦時中に重ねわせる高齢者多いのではなかろうか。

75年前、長崎で原爆投下に遭遇した時は、私は4歳だった。それから75年、海外生活も体験し、現地で被爆者としての立場ばかりを主張しても、核兵器の脅威を伝えることはできないという体験をし、かなり驚いた。しかし、大げさではなく地球さえも汚染しつくし、人類はもとより、生物が生存できなくなる核兵器について、次世代へ伝えていくために、私自身は、被爆者でありながら、幼児であったために、当時のことは残念ながら正確に記憶していないから、これまで発表された日米の資料や、著書、当時の体験を記した証言などを参考に分かりやすく纏めてみたい。

この度は、「子羊(原爆)が生まれて、広島、長崎に投下されるまでの経緯」を、時にはセリフ入りで再現(書き手の創作)し、難いテーマをできるだけなじみやすく表現してみた。また、私の家族が疎開していた滑石地区(上揚)と隣接する岩屋地区で、勤労奉仕に駆り出されていて、原爆投下の直撃を受けた16歳の少年と、15歳の少女の事を記録しておくことにした。この二人は、長崎の中心地に入る稲佐から、疎開して来ていいた生徒であった。この村の地元の人々には、この二人のような重傷者はいなかった。
この場所の峠を越えたところには救護所が造られ、原爆投下後、浦上で負傷した人々が、救助を求めてたくさん押し寄せていた。かつて、ヒトラーは、権力を自分に集中させるため、姑息な方法で次々に新しい法律や思想を決定し人々を拘束した。その一つが「反ユダヤ人法」である。一見どこにでもある人種差別のようで、見逃されそうなことが、人類を滅亡させる核兵器開発につながり、広島、長崎への原爆投下を実行させた。
ドイツを追われたユダヤ系の知識層の人々の多くは、米国へ亡命した。核兵器をアメリカで開発した科学者の多くはユダヤ系であった。彼らは、戦争を一刻も早く終わらせ平和な世界を取り戻すという目標で、この救いようのない核爆弾の開発に励んだ。彼らにとっては、崇高な目標に違いなかった。

一方、ユダヤ系の音楽家で米国に亡命した人々は、ハリウッドで世界の人々が愛する映画音楽の基礎を築いた。オット・クレンペラー、シューンベルク、マーラーの妻のノルト、等々である。科学者も音楽家も優れた才能と頭脳を持つ。だが、その生き方によって人類への影響は正反対の結果を産むことになるという実例を、資料や長崎の被爆者の証言、肉親(亡母)の話に沿って、なるべく事実から乖離しないように纏めてみた。被爆者が、そろそろ生存しなくなる時期を迎え、それぞれの解釈によって原爆投下までの経緯が語られることが多くなってきた。それは時には、耳を疑うほど真実から遠いものもある。このレポートも分厚い資料を完璧に読みこなしとは言えないので、多くの関係者の方々が、補足訂正してくだされば、原爆を知らない次世代の人々の役にも立つものになるのではと、期待したい。

(2020・7・1記)

 

「ヒットラーの「反ユダヤ主義」から、広島、長崎までの経緯を追う」

 


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