少年と犬 ~福島原発事故によせて-2~
(核戦争を防止し平和を求める茨城医療人の会、会報から)
散歩に行くと、ぐいぐい僕を引っ張ったシェーパードのマーク
シャープな顔立ちと背中にすいっと通った黒い毛並み
まるでウルフのようだった
僕が叱られて泣いていると、ぺろぺろと涙をなめてくれたやさしい犬
川底の石ころが透けて見える川面に、雪解け水が流れ込み
川岸に柔らかな新芽が出始めた、2011年3月11日午後2時46分
大地が揺れて、原子力発電所が壊れた
僕は悲しい別れをひたすら隠して
笑顔でマークの鎖を解いてやった
うれしそうに走り回っていたお前
気がついたら、空っぽの家
捨てられたマーク
あれから、お前は何を食べてどこに居るのだろう
この一年半、お前のことを忘れたことはない
頼むから何とか生きていてくれ
今度巡り合った時、お前が怒り狂って狼となって、僕に歯向かってきたとしても
それは仕方がないこと
とにかく、僕はマークの居る故郷に帰りたい
それが叶うなら、エアーコンも電子レンジもテレビもいらない
例え不便な原始の生活になっても、僕はかまわない
そして、きれいになった空気を胸いっぱい吸って
マークと一緒にあの野山を駆け巡りたい
その時まで、マークよ、生きていてくれ!
置き去りにされた犬たちを見て、2012年9月28日 記